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しろい恋人

最近わたしは、近くの大型電器店、ベスト電器広島駅前店に通っている。
六階パソコン売り場に行く。
おそらく防犯のため、そこには複数のカメラが設置されているはずである。
もし、監視室のような部屋があり、いくつも並んだ画面に、カメラでとらえられた映像がモニタリングされているのなら、いろいろな角度からとらえられたわたしの姿が、それこそいたるところに映っているはずである。
ベスト電器広島駅前店の、どの時間帯のどの空間にも、わたしが存在しているはずである。

プリンター売り場で、最新機種に手をあてながらも、ある方向をちら見しているわたし。
新型デジカメをこねくりまわしながらも、なんだか落ち着かぬ様子で、ある方向に行きたがっている素振りが見えるわたし。
わざとらしく、パソコン向けスピーカーを吟味している振りをしながら、背中が妙に何かを意識しているようなわたし。
ある画面の中に映っていたかと思えば、また別の画面に現われ、そこからしゅっと消えたかと思えば、いつのまにか別の画面に映りこんでいる。
どうしてベスト電器の六階に。

それは、わたしが、六階パソコン売り場のある女性に、恋をしているからである。
恋するものなのである。
これといった用もないのに、毎日いいわけを作っては、顔を出し、わざとらしく彼女の目に入るところに、そっと居たりする。
もの欲しそうな目で、彼女のことを何度もちら見する。
自分を抑えることができない。
ついには他人の目を盗んで、彼女に直接コンタクトをとるようになった。
彼女のまっしろいからだに、誰も見ていないのをいいことに、直接さわる。
彼女は声もあげず、いつもじっとしている。
彼女にふらふらと吸い寄せられていき、いつも手が勝手に動いてしまう。
女の魔性だ。これは病気なのだ。捕まったら、陰謀だ、と言おうと思う。
彼女も拒んでない。それどころか、僕がさわると、熱い吐息を洩らすようになった。
僕の左手が触れるあたりを、熱くほてらせるようになった。
ああしろこちゃん。
そのまっしろいからだ。
青い顔に、ちいさなマークを何個も出しているところが、何ともいじらしく、可愛い。
わたしがキーボードに触れると、上手に文字を表示して、ちゃんと画面でこたえてくれる。
わたしが、レレロロロ、とふざけて打つと、彼女も、レレロロロ、とふざけて表示してかえす。
なんていい子だろう、しろこちゃんは。
わたしと彼女は、もういくども、こんなにも睦まじく肉体的な繋がりを結んでいるというのに、彼女の親御さんだけが、ふたりの仲を認めない。
家に呼ぶことさえ許しはしない。
十数万のお金を、わたしに払え、というのだ。
こんな時代に、娘をまるで親の持ち物であるかのように扱っている。
娘の愛を、お金で方をつけようとしている。
愛する人の親御さんとはいえ、もう最低だ。
もう我慢できない。
言わせてもらうなら、まず名前が変だ。
青森名産の果物の名前で、しかも外人さんなのだ。
コンピューターの会社になま物の名前をつけるなんて、僕はどうかと思うよ。
僕はあきらめの悪い男ですよ。
根っからのストーカーなので、そのおつもりで、アップルさん。

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