東京日記(88)

1月26日
「おめでとうございます、あなたはチンコがでかい人コンテストに見事当選されました」というメールが、夜、突然わたしの携帯に送られてきた。
なぜわかったのだろう。
しかし、全然使い道がない。

高校生の頃、サッカー部であまりにシュートが下手で入らないFWだったので、「アジアの大砲」高木琢也をもじって、「鳴らない大砲」とあだ名されていたことを思い出した。

あと、よく寂しい主婦向けの勧誘メールがわたしの携帯に送られてくるのだが、わたしはいつ主婦になったのだろう。しかも寂しいのだ。

どの時空のわたしも、性別さえ越えることのできた別のわたしも、こと、性的にだけは満たされてはいないらしい。あまねく時空で草が永久に生えないアリゾナの砂漠のような性生活を送っている、そんなわたしです。今日からあだ名はヴァージニアということでどうでしょう。

キノコストラップ

住む町の駅前の商店街にあるコンビニで、キノコストラップというものを見つけてしまった。コンビニの前にいくつか置いてあるガチャガチャの中に、偶然見つけてしまった。

ガチャガチャの器械の中を横から覗き込んで見ると、中にあるカプセルの量は残り少なくなっている。

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東京日記(87)

家の周りに、
「気をつけろ、変態者があなたを狙っている!!」
と大きく書かれた看板がいくつかたてかけてあるのですが、その看板が目に入るたびに、なぜか自分のことを言われている気がして、一度あたりを見回してしまうのはなぜでしょう。

「気をつけろ、変態者があなたを狙っている!!」
と看板に呼びかけられるたびに、わたしは自分のことを、「あなた」の方にではなくて、「変態者」の方に、自然と当てはめてしまっているのです。

毎回自分自身に、エエエイ、と思ってしまいます。
なぜだ、と思ってしまいます。

わたしは自分のことをワルだとか、ちょっと変わったヤツに見せたいだなんて意識は、もういい年した中年なのでありませんし、辛いカレーを、全然辛くないじゃん、なんて汗だくになりながら食べたりもしません。カレーは中辛が好きです。ハウスバーモントカレーとか、こくまろカレーが大好きな小市民です。

変態者の方に自分をあてはめている、自分自身が非常に不本意なのですが、でも自分のこころは偽れないのです。

常に自分が被害者意識を持って生きているよりも、自分は誰かにとって加害者(変態者)になるおそれがあるのだ、と思っている方が、まっとうな大人である気がするので、これはわたしが常に人にやさしくあろうと心がけている、紳士であるという証ということでいいのでしょうか。

別にわたしは変態者ではないのですが、わたしでさえ、こんな感じなので、これは本当の変態者が見ても一瞬ドキリとするだろうな、と思います。

しかし、全くの自意識過剰なのですが、偶然その看板たちは、わたしの住むアパートを取り囲むように設置されているのです。
まるでわたしが外に出ないための、結界を張ってでもいるかのように。
わたしの近所以外では、その看板も見かけたことがないですし。

秋葉原

人と会う約束があって秋葉原に行った。
秋葉原は夜の6時だった。
6時だけどもう夜だった。
季節は冬なのだった。

ヨドバシカメラで待ち合わせだったのだが、待ち合わせの時間よりも早く着いたので、一階のフロアーを見るともなく見て回ることにした。携帯電話の売り場や、パソコンの売り場が、一階にはあるようだった。

それにしてもアキバのヨドバシカメラにはいろんな人がいる。

ある種予想通りの、そんな服どこで買ったんだよ、何でそんな組み合わせで着てるんだよ、というような、絵に描いたようなオタクの人たちもいれば、一見今風な服を着ているが、靴だけがうわぁという感じのものを履いてる、かくれそこねオタク、という感じの人もいる。

どこのオダギリジョーだよ、という感じの、ちょっとアキバらしくない人もいて、何でここに居るのかわからない感じもしたが、でもその人がじっと見つめている商品を見てみると、本物のオダギリジョーや、別の街にいるオダギリジョーなら、おそらく熱心には見つめたりはしないようなものなのだった。

そういう日本の人たちがいるかと思えば、本当にその格好で自分の国から来たのか、という、この季節にジーンズとパーカを着ただけで、それにナップサックを背負っただけの身軽な格好でいる白人の女の子二人組みが、携帯電話を手にとって英語で何か話しをしているし、観光でやってきたらしい中国人の家族が、電化製品のフロアーに行こうとしてるのか、エレベータの方に急ぎ足で向かっていて、インド人らしき人も、ちらほらと見かけたり、いろんな国の人たちがいる。

そしてその、いろんな国の、いろんな人間が交じり合って商品みているのが当たり前の風景で、それぞれがお互いに対して無関心な感じなのが、あまり他にはないSFの未来都市みたいでもあって、さらに全体的にはやはり東京の東側の、どこかイケていない猥雑な感じの空気が漂っているのが、外に出れば最新の高層ビルも建っているのが見えるのに、どこかちょっと独特な場所で、不思議と気軽な気持ちになれるような気がする。
別に自分は犯罪者でも逃亡者でもないが、勝手に潜めるような感じがして、わたしも他の町よりは、人に秋葉原で会いましょう、と言われるのが、いちばん気が楽だったりもするのだった。

パソコン売り場で、パナソニックのノートを熱心に見つめていたらしいオタクの人に、店員がよろしかったらなどと話しかけていて、訊かれてもいないのに、

「僕のレッツノートをそろそろ買い換えてもいいころなんじゃないかな、なんて思っていまして、ははははははは。でも今のは軽いですね、ありえないくらい軽い、ホント軽いな、ホント軽いよ、どうなってんのこれ」

とそのオタクらしい人はレッツノートをひょこひょこ持ち上げながら言っていた。その様子が、レッツノートの横に置いてある、メーカのポップの写真に写ってる、何でも肩肘張らずに出来て、自然で素敵なわたし、って感じの女性モデルの様子と悪いけどあまりに不釣合いで、お前何様なんだよ、というような感じの女だと、女様だと、すぐにキモイとかいいそうな感じだったのだけれど、何かここだと許されるような、空気もへんにならないような感じがあって、べつにそうですけど何か?という感じがあって、周りにいた客も店員も別にその様子に平然としている。あえて平然とした感じを装っているところもどこにもなくて、何かそれがいいな、とわたしはその様子を見て勝手だがそう思ったのだった。


ぼくは勉強ができない

わたしの育った町である広島というのは、今でも中四国で唯一人口減少のない都市で、それなりに栄えており、「広島カープ」や「サンフ レッチェ広島」という、野球チームやサッカーチームがある都市でもあって、いわゆる福岡や仙台や札幌などと同じような、その地方ではいちばん栄えた中核となっている都市です。おそらく福岡や札幌などもそうであるように、その都市独自の色というものもあって、 グローバル的に見れば、「マツダ」という世界的な自動車会社の城下町で、主にその自動車産業を中心として栄えているという町でもあります。

関東圏や関西圏や、あるいは名古屋圏にいる人にどこまで伝わるかはわかりませんが、こういう地方都市で生まれると、そこそこ普通に、そこそこ幸せに生きられたのです、これまでは。本人がある程度要領のいい、器用な人間だった場合。

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